きっかけは突然に

しばらくポケモンから遠ざかっていたこの私が一晩にして徹夜でレートに勤しむようになるという怪奇現象が発生した。

きっかけは別ゲーだ。かつて私はガンダムオンラインというゲームに熱中していた。2017年1月〜11月の間は他のゲームに一切手を出さなかったほどだ。半年にして最高ランクである大将に昇格。あるチームにスカウトを受け入隊し、環境の最前線でバリバリ戦っていた。

このゲーム、なんと50対50で戦力ゲージを削り合うという大規模な団体戦である。前線を張る者、後方から火力支援する者、レーダーや機体修理で支援する者、迫撃砲で制圧支援をする者、狙撃で敵の重要目標を撃破する者。

しかしこれらはあくまで機体特性の話であり、実際はさらに50人を統率し指揮をする者、核兵器を敵基地まで運搬・起動する者、単身拠点に忍び込み戦力ゲージを大きく削る者と様々である。こうした戦略の中核を担う仕事を私は得意としていた。どの程度かと言うと、対戦相手に私がいるだけで特定のルートに地雷を撒かれたり、拠点に常駐する者が出るレベルには警戒されていた。

私はチームメンバーで6人の小隊を組みボイスチャットを使って参戦することが多かった。最も多く組んだのは部隊長。狙撃の達人で狙撃職ランキングの常連でありながら、他の職も高レベルにこなすエキスパートだ。私は隠密行動による敵拠点の撃破や戦況を見極め指示を出すという専門分野の都合上、後方から全体を見渡せるスナイパーである部隊長とウマが合った。他の部隊員は前線での戦闘が得意な者が多く、私と同じく指揮が得意な者もおり、総じてバランスのいい小隊を組んでいた。我が小隊の有無は50人の勝率に関して馬鹿にできない影響を与えていただろう。

 

しかしそんなエキスパート揃いの小隊を組んでも勝てない状況があった。本来は意図的に複数小隊で同じ戦場へ参戦することができないシステムなのだが、そのシステムの穴を突いて複数小隊で参戦する、いわゆる「連隊」という集団がいた。

1小隊6名に対し、3〜5小隊で構成される連隊はその数30名にのぼる。本来バラバラなはずの50名のうち半数以上が戦う前から統率の取れた連隊集団が相手では、たかが1小隊の連携が取れたところで歯が立たない。まして即席の50名の統率を取るなど無理があった。運営は度々この行為を慎むよう忠告し、BANなどもしてきたが、ネットゲームの世界にモラルなど無く、連隊は未だに活発に動いているようだ。

我が部隊は人脈に恵まれ、連隊をする能力はあったが、モラルに反するプレイは楽しくないと連隊に手を出すことは最後まで無かった。

精鋭揃いの6名で知恵を絞っても不正行為に敗北する現状に嫌気がさし、我が部隊からは引退者や別ゲーへ移住する者が現れた。

 

11月になると常連の小隊員は私を除き別ゲームへ移住した。しかし私は連隊に抗い、別部隊の有名人らとも共に戦ったが、苦難を分かち合う仲間がいない状況に耐えかね、11月末、遂に引退した。

 

私が引退した後、唯一狙撃手である部隊長のみが復帰し半ば崩壊した部隊を再建しようと努めたようだ。しかし元凶である連隊がある限り同じ道を辿るのみであった。

部隊長は立派であった。私の良き友であった。半年もの間1人で戦い、部隊員の復帰を待った。その苦労に報いなかったことが悔やまれる。

 

部隊長より引退したとの報告を受けた時、ようやく私は我に帰った。

 

私はサークルの長として、かの部隊長を見習わなければならない。大きな器を持ち仲間に慕われ、実力は折り紙つき。最後の1人になるまで戦う責任感、理不尽な存在に立ち向かう精神力。いずれも私に欠如しているものだ。1年半もの間ポケモンから目を逸らしてきた私には、彼に合わせる顔が無い。

 

部隊長の引退、それは私に決心をさせた。この世界で戦い抜くことを。構築共有という「連隊」に立ち向かい、サークル員という「小隊」を鼓舞する存在になる。まずはシーズン9、実に8シーズンぶりのまともな参戦となるが、際限無き戦いに身を投じる決意である。

 

引退した別ゲームでの出来事がまた別のゲームでのモチベーションを最高まで高めるという未曾有の出来事に、きっかけは突然に訪れるものなのだなと感じた。